そのなみだに、ふれさせて。
なんて観察しながらわたしも瀬奈といつみの間に腰を下ろせば、椛が瑠璃を呼ぶ。
さっきのおどろいていたような雰囲気はもう姿を消して、代わりに泣きたくなるような寂しさだけが充満する。
「瑠璃に言えなかったことがあるんだけど、」
誰よりも兄妹思いな彼だからこそ、言えなかったこと。
……ずっと、椛が、瑠璃に隠してきたこと。
「俺結婚しようと思ってる」
シン、と不自然な沈黙がおりるリビングの中。
その静けさが痛くて、そろりと瑠璃を見た。
「いろちゃん」
自分の口から、ちゃんと瑠璃に言いたいって。
でも瑠璃にそう言ったらまた傷つけそうだからって。何度も何度も椛は悩んでたけど。それでもわたしたちの答えは、最初から変わらなかった。
「おめでとう」
世界が、呼吸を取り戻したみたいに。
瑠璃のその一言を聞いて、みんなホッとした。
取り繕うような表情はしていない。
ということは、ちゃんと心の底から思ってくれてる。何よりもそれに、安心した。
「いろちゃんが結婚するんだから、がんばってお兄ちゃん離れするよー。
だからいろちゃんも、わたし離れしなきゃだめだよ?」
「それは無理」
「なんで即答なの……!?」
「俺のシスコンは不治の病だから。
っていうかそれとこれとは別でしょうに。俺まだ瑠璃に彼氏とか許してないし。許さないし」