そのなみだに、ふれさせて。



「怒らせちゃったから……」



「お前あいつに何したんだよ〜」



「う……」



……そして千勢と恋愛絡みで揉めてる、と。

どうしよう!?と瑠璃の目が穏便にわたしに助けを求めてきているけれど、その内容を知らないせいで、上手く助けてあげられない。



「何したっていうか。

俺と付き合ったから怒らせちゃったんだよね」



どうしようかと、悩んでいる間に。

あっさりそう言ったのは彼で、瑠璃は「なんで言っちゃうんですか……!」とあたふたしてる。



そんな瑠璃を見て、どうやらふたりはピンときてしまったらしい。

……まあ千勢の気持ちは分かりやすかったものね。




「千勢に告られた〜?」



「告られたっていうか振ったんじゃないの?」



兄ふたりに問い詰められて、くちびるを引き結んでしまう彼女。

恥ずかしいのと困っているのが重なっているせいか、ちょっと涙目になってるし。



「そのくらいにしてあげて。

千勢だって、自分のいないところで色々言われるの嫌でしょうから」



ようやく助け舟を出してあげれば、瑠璃がこくこくとうなずく。

納得はしていなかったようだけど大人組の話題が逸れたタイミングを見計らって、「夕飯にしましょうか」と席を立った。



「あ、南々ちゃん。わたしもお手伝いする」



「ふふ、手伝うほどじゃないわよ?」



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