そのなみだに、ふれさせて。
わたしが高校生のときは、ちょっと背伸びしすぎていたと思う。
健全だったかと言われたら決してそうじゃない。……瑠璃にはさすがにこんな話できないけど。
「あー……ああ。
南々ちゃん、高2の最後からいっちゃんと同棲してたんだったな……」
「そう。だから強く言えないのよ」
普通ならありえない話だけど、それを許されていたのがわたしたちだ。
色々と特殊なケースだから、参考にはならない。
「っていうか、いろちゃんも呉ちゃんも先にちゃんと自己紹介してよ……っ!
一方的に色々言ってるの、紫逢先輩に迷惑なんだからね……!?」
"瑠璃が反抗期だ"と文句をこぼしつつも、なんだかんだちゃんと自己紹介しているふたり。
それに続くようにして、いつみや夕帆先輩も名乗っていたけれど。
改めて考えると、凄いメンバーよね。
ここにまだ、八王子グループの跡継ぎがもうひとりいるし、アイドルもいるし。
「南々瀬さんって。
保健医の木崎先生とも知り合いなんですか?」
子どもたち4人分の夕飯を出して。
ずっといつみの膝に乗っていたななみを自分の膝に乗せると、ななみはちゃんと自分でカレーを食べてくれる。
「俺の分まですみません」とわざわざ言ってくれた紫逢くんに「いいのよ」と返した後、彼が放ったのが今のセリフだ。
……その名前を聞くのは何気にひさびさだけど。
「うん、大和とは中学からの同級生なの。
王学で保健医になったのは知ってたけど、なかなか会ってないのよね」
最後に会ったのは、大和とみさとの結婚式だ。
いまはアパレル会社の社長をつとめているみさと。テレビ番組なんかにも衣装提供しているから同じ芸能という繋がりもあるし、何より親友とあって、彼女とはたまに会う。
だからといって、大和と会うわけではないし。
そろそろ子どもが生まれるから、どっちにしろ必然的に会いに行くことになるだろうけど。
「南々ちゃんは、ほんとに人脈すごいもんねー」