そのなみだに、ふれさせて。
「あ、」
その首にかかるネックレスが、今朝はなかったことに気づく。
わたしの視線に気づいたらしい紫逢くんは「独占したくて」なんて小さく笑うけど、素直にそう言えるのはいいことだと思う。
「まま、」
くいくいと。
服を引っ張られて膝の上にいるななみを見れば、彼女は「いっぱいたべた」とアピール。
「ちゃんと完食できて偉いじゃない。
あとでパパにも褒めてもらおうね」
「はぁい」
頭を撫でたら、機嫌良さそうに笑うななみ。
口元をティッシュで拭ってあげて、「ごちそうさま」まで言わせると、おもむろにななみがわたしの膝からおりる。
「どうしたの? ななみ」
ゆったり歩いてななみが向かった先は、なぜか紫逢くんのすぐそば。
悟った彼が「おいで」と手を伸ばしてくれて、ななみは紫逢くんの膝の上にちょこんと座ってから、甘えるように彼の服を握った。
「ななみって確か千勢にも懐いてなかったか?
完全にこの歳で面食いじゃねーか」
大人組での会話に飽きたのか、莉央がこちらに歩み寄ってきて腰を下ろす。
……面食いじゃないとは思うけど、わたしも比較的「面食い」と言われるせいで否定できない。
「かわいー……俺子ども好きなんだよね」
「でも紫逢先輩って一人っ子ですよね?」
「そうだよ。
だから余計に、子ども相手にすると底抜けに甘やかしたくなっちゃうんだよね」