そのなみだに、ふれさせて。
・できることならば終わりなきよう
◆
「……だいじょうぶ?」
綺麗なオッドアイが、わたしに向けられる。
すこしだけ風に当たりたいと言ってリビングを出れば、彼も「ついていくよ」と一緒に外へ出てきてくれた。
こくん、とうなずく。
うなずくけど、頭の中はぐちゃぐちゃだった。
「……わたし、」
会長は、ほづみちゃんのことが好きなんだって思ってた。
だからあきらめなきゃって。このままずっと好きだったとしても苦しいだけだって、そう思ってた。……なのに。
「何にもわかってなかった……」
彼がほづみちゃんを好きじゃないなら。
まだチャンスはあるんじゃないかって。そんな風に考えてしまった自分が、すごく嫌になる。
……紫逢先輩のことを、選んだのに。
会長があの子を好きじゃないのなら、なんて、そんな都合の良いことをしたくない。
だけど。……だけど、それでも。
「瑠璃さー……」
家の前にある階段の手すりに身を預けた先輩が、わたしを見る。
手を伸ばして彼はわたしに触れようとしたのに、結局その手はわたしのどこにも触れなかった。
「なんで会長のこと好きになったの?」
「え、」
「ほら、いままで会長を好きだったことは知ってるけど。
どうして瑠璃が好きになったのかまでは、よく考えたら知らないなぁと思って」