そのなみだに、ふれさせて。
先輩はわたしのどこを好きになってくれたんだろう。
わたしはこういうウジウジした性格で、なんでもそつなくこなしてしまうような彼に好きになってもらえるような要素なんて、ないように思う。
「わたしのこと、信じてくれないなんてひどいです。
……言ったらわたしが先輩と別れるって言い出すとでも思ったんですか?」
「、」
「たしかに、会長がほづみちゃんを好きじゃないんだったら、わたしにだってチャンスはあるかもしれません。
……でも、紫逢先輩と別れるなんて無責任なことはしません」
そうじゃなきゃ、「プレゼント」なんて渡されたネックレスを受け取ったりもしない。
お兄ちゃんたちに、わざわざ彼氏だって言ったりしない。
「……はは、っ」
静かな夜の住宅街に、彼の乾いた笑みが落ちる。
わたしの肩に顔をうずめた紫逢先輩は、「あー」と小さく呻くような声を声を出して。
「俺のこと、どれだけ惚れさせたら気が済むの?」
「惚れさせたら、って……」
「自分でも怖くなるぐらい……
瑠璃のことを好きになってて、困る」
ストレートに感情を伝えてくれるから、不可抗力に顔が赤く染まる。
さっきまでの泣きそうな顔が嘘みたいに綺麗に笑った紫逢先輩のくちびるが、ちゅっとわたしの額に触れた。
「……くちびるにもキスしていい?」
甘い甘い問いかけに、ドキッとする。
「だめ」って言ったって、どうせするくせに。
返事しないでいたら、先輩の指がわたしの顎をすくうように持ち上げる。
至近距離で二色の瞳に捉えられて、目を離せなくなる。