そのなみだに、ふれさせて。



「目閉じてくんないと、恥ずいんだけど」



「恥ずかしいとか絶対思ってませんよね……?」



「うん、思ってない。 ……でも、」



吐息が触れ合って、羞恥に強く目を瞑った。

頭の中も身体も熱いし、なんだか雰囲気は甘いし。



「……好きな子相手だと、さすがに緊張する」



ささやきの意味を、理解するよりも早く。

くちびるが重なって、思考を一瞬にして染め上げられた。



……いつも、何も考えられなくなる。

首裏に腕を回してキスの合間に呼吸するだけで精一杯で、溶け落ちてしまいそうになる。




「っ……ふ、」



薄く甘い痺れが背筋を這うような気がして、ぞくりと肌が粟立つ。

くちびるが離れると、言われなくたってとろけた顔をしているのはわかった。それが恥ずかしくて、申し訳程度に腕で顔を隠す。



「会長の前でも、その顔見せたの?」



「み、みせてません……っ。

会長には、ほんとに一瞬キスされただけで、っ」



あわてて弁解するわたしに、彼はくすくすと笑う。

どうやらわたしを揶揄っているだけらしい。……もう。ちょっと女性経験豊富だからって、すぐわたしで遊ぶんだから。



「瑠璃、紫逢くん。そろそろいいかしら?

妹大好きなふたりがいい加減飛び出してきそうな勢いなんだけど」



「な、南々ちゃん……っ。

まって、いつから見てたの……!?」



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