そのなみだに、ふれさせて。
そんな当たり前のこと、
知らないなんて言葉で済ませたくないの。
「瑠璃?」
つないでいた手を離して、うしろから彼に抱きつく。
首だけで振り返った先輩は、わたしを不思議そうな声で呼んだ。
「すこしだけ……勇気、ください」
「、」
「みんなに、踏み込むための、勇気」
せっかくずっと一緒だったちーくんと、このままなんて嫌なの。
会長がいる生徒会は、もう残り少ないから。……だから、無駄になんて、したくない。
「……瑠璃なら、できるよ」
先輩の優しい声が、頭上からふってくる。
わたしを安心させる目的だったんだろうそれは、本当にわたしの心を落ち着けてくれた。先輩の纏う和の香りに、そっと肩の力が抜ける。
まばゆいほど、透明で。
だけど繊細で、儚くて、美しくて。
痛いくらいに優しいその感情の名前を、
わたしも彼も、もう、知っているから。
「できるよ。……だって」
それはきっと。
何よりもわたしに勇気をくれる言葉だ。
「瑠璃のそういうまっすぐなところを、
俺は好きになったんだから」