そのなみだに、ふれさせて。
──休み明け。
ひとりで登校してまっさきに生徒会棟に向かえば、めずらしくわたしが一番最後だった。
「あれ、瑠璃。
しばらく来ないんじゃなかったの?」
首をかしげるあけみ先輩にあわせて、パープルブラックの髪が揺れる。
こころなしか前以上に綺麗になってる気がするんだけど、菅原先輩と何かあったんだろうか。……いや、わざわざ声に出して聞いたりはしないけど。
「そのつもりだったんですけど、」
紫逢先輩の隣に座って、ふっと息を吐く。
「……今日、わたしに時間をください」
言い切れば、みんな不思議そうな顔をする。
だけど思い当たる節がまったくないわけではないようで、みんな微妙な表情だった。
「無理に何か聞き出そうとか、そういうつもりはないんです。
……ただ、わたしの話を、聞いて欲しくて」
シン、と。
不自然に静まる部屋の中に、チクタクと時計の秒針が響く。……チク、タク、チク、タク。
「わざわざ許可取らなくても、誰も怒ったりしねえよ。
……俺も、お前に聞きたいことあったしな」
会長が、穏やかな口調でわたしに言う。
おかげでみんな、無意識に詰めていた息を吐き出した。……よかった。
「ぜんぶ話すので、聞いてください」
弱さを見せれば仲良くなれるとか、そういうわけじゃない。
仲良くなるために弱さを見せるわけでもない。
ただ、わたしは。
自分の弱いところもすべて知って欲しいと思うくらいには、この人たちのことが好きなだけだ。