そのなみだに、ふれさせて。
「それはあなたの勝手な思い込み」
「なにが言いたいの? わたしは、」
「そうやって自分を守ろうとしてるだけじゃない。
本当は、会長のこと好きなくせに」
吐き捨てた声が、底冷えするように痛く冷えた世界に反響する。
そのせいで思ったより大きな声が出たことに気づいたけれど、構わずに続けた。
「はじめから会長のことが好きでしょ。
……だからわたし、ほんとうに、勘違いしてた」
ぽたりと涙がこぼれ落ちる。
結局はこうやって彼女に八つ当たりしたかっただけなのかもしれない。
みにくい感情を、こうやって押し付けてしまいたかっただけなのかもしれない。
わたしはすぐに感情が昂るから、自分の感情を伝えるのはひどく苦手だ。だけどもう、なんでもよかった。……だってそうでしょ?
自分の人生なのに、どうしてしあわせになりたいって思っちゃいけないの?
どうして自分の人生を、犠牲にしなきゃいけないの?
誰だって、そう思ってるじゃない。
「だって……ずっと、見てたの」
「、」
「会長のこと、ずっと見てたの……っ。
だからっ、ほづみちゃんが会長を好きなことぐらいすぐに気づいた……っ!」
やっぱり、上手く伝えられない。
結局わたしは、最後まで自分勝手だった。
「っ、だって同じなんだもん」