そのなみだに、ふれさせて。



ほづみちゃんが、会長を見る瞳が。

あけみ先輩が、紫逢先輩を見るときと同じで。



紫逢先輩が、わたしに向けてくれるもので。

……わたしが、会長に向けるのと、同じだ。



「存在を聞いた時から、ずっと……

会う前からずっと……うらやましかった」



ぽろぽろと、とめどなく涙が落ちていく。

視界はとっくにぐちゃぐちゃで、会長の表情どころかほづみちゃんの表情も見えなかった。



「っ、好きだからうらやましかったの……!

何度も何度もわたしならよかったのにって思ったけど、でも、っ……」



嗚咽で言葉が出てこない。

……本当は、こんなはずじゃなかったのに。



会長に好きだって言うつもりだったのは確かだ。

だけど紫逢先輩とこれからも付き合っていこうって、そう決めてたから。だから、そこまでしっかり言おうって、思ってたのに。




「……もういい」



涙でぐちゃぐちゃの視界でもわかる。

誰がわたしを抱きしめてくれているのか。



「……俺が悪かった。

決めたくせに、お前に中途半端なことしたな」



「会、長……」



「……ほづみは悪くねえんだよ。

むしろ、俺はこいつの気持ちを踏みにじった」



降ってくる声が、状況を説明しようとしてくれる。

だけど理解が追いつかなくて、頭の中は真っ白で、耳に届いた鼻を啜る音に、ほづみちゃんが泣いていることを知った。



「……ちゃんと説明するから、聞いてくれるか?」



< 181 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop