そのなみだに、ふれさせて。

言われて、わたしはようやく、紫逢先輩の隣に座りなおした。

その拍子に先輩はちょっとだけ切なげに目を細めてわたしの頭を撫でると、手を握ってくれた。



「……まず。

俺とほづみは、恋人以前に又従姉妹なんだよ」



「またいとこ……？」



「俺の祖母と、ほづみの祖父が兄妹だ。

正式な順序で家を継ぐのはほづみの方。俺の祖母は結婚して名字が変わってる。さらに生まれた娘である俺の母親も結婚して名字は瀬戸内になった」



「……、なる、ほど？」



図でもあればわかりやすいのかもしれないけど、口頭で言われたらわけがわからなくなる。

でも、祖母と祖父が兄妹で、ひとまず親戚だっていうのはわかった。



そして簡単に言うと、ほづみちゃんと会長は「またいとこ」になる。

つまり親同士が、いとこなわけで。




「いま現在、極道としての御陵の仕事を引き継いでいるのはほづみの父親だ。

そのままの筋で継いでいくのだとしたら、後継者はほづみしかいない。一人っ子だからな。……ただ、御陵は女の跡継ぎを、あまり良しとしていない」



「………」



「継がせるのだとしたら、ほづみがいい。

でもそこから男を婿養子にして迎え入れるのなら、名前は離れているが跡継ぎの権利を持つ俺と結婚した方が、話が早い」



それって……

この間、莉央ちゃんが言ってた話、だよね……？



「俺はその話を一度呑んだ。

……ほづみの答えは言うまでもないな」



会長のことを、好きなほづみちゃん。

その相手と結婚できるのなら、たとえ家のことが絡んだ結婚だとしても、よかったはずだ。



それに会長は一度それを呑んだらしい。

だったら、何も問題はないはずなのに。