そのなみだに、ふれさせて。
「ほづみにも、協力するように言った。
……ただそこで、予想外のことが起こった」
「………」
「お前が葛西と付き合いだしたことだよ」
紫逢先輩とつながったままの手。
きゅっと握られて、「はなさないで」って言ってるみたいに。
「……ほづみを彼女だと言っている手前、余計なことはできなかった。
そのくせガラにもなく焦って、強引な手段に出た」
甘い甘いミルクセーキ味のキス。
その甘ったるさは、切なさだけ残して。
本気で会長を最低だと思った。
……だけど、あのキスは、ほんものだったの?
「泣かせて悪かった。
こうなるなら、はじめからお前にはっきり言ってやればよかったな。……ほづみ、お前も」
肩を震わせる彼女のことを、抱きしめてあげている会長。
すごくすごくお似合いなのに、会長は、わたしを好き?
「……お前の気持ちも知ってた。
なのに嘘つかせて、強がらせてごめんな」
「っ、あやまんないでよ……」
ハッとして、ソファを立つ。
紫逢先輩とつながったままの手。離して欲しくて彼を見れば紫逢先輩は首を横に振ったけど、わたしはそれを強引に振り払った。
「っ、ほづみちゃん……!」
ほづみちゃんの、言うとおりだった。
わたしは、悲劇のヒロインぶっていただけ。……本当に悲しんで苦しんでいたほづみちゃんにあんな風に言われるのも、当たり前のことだった。