そのなみだに、ふれさせて。
ああ、紫逢先輩が家に来た時のあれか……
「気にしてません。
フリーの時なら考えたかもしれないですけど、いまはわたし、紫逢先輩と付き合って、」
「ねえ、もういいじゃない。
付き合ってるとか付き合ってないとか好きだとか、あんた達ほんとめんどくさい。今から瑠璃のこと好きなだけ奪い合えばいいでしょ。ね?萩原」
面倒そうに言い放ったのは、あけみ先輩で。
彼女の言葉に、みんなが「奪い合う……?」と各々考える中、呼ばれたちーくんは口を開いた。
「なんでそこで俺が出てくるんですか」
「だってあんた瑠璃のこと好きでしょ。
なんなら元々付き合ってたんじゃないの?」
ば、バレてる……!!
なんで!? 紫逢先輩にしか話してないよ!?
「……なんで知ってるんですか」
「好きなのは態度見てればわかるし、元から付き合ってるような気がしてた。女の勘。
あと。……そこのバカが、萩原は瑠璃の元カレだったってわざわざ相談してきた」
「なに相談してるんですか紫逢先輩……」
しかもよりによって自分を好きでいてくれてるあけみ先輩に……
いや、もうあけみ先輩は菅原先輩と付き合ってるし、べつに気にしてないのかもしれないけど。
「……瑠璃」
甘く、名前を呼ばれる。
視線を持ち上げたら、なんだかジリジリした。
「おいで」