そのなみだに、ふれさせて。
・宙で足掻いてでもつかみたい未来
◆
「って、ことがあって……」
「あらあら、逆ハーレム真っ只中ね」
「のんきだね南々ちゃん……!?」
家に帰って今日あったことを南々ちゃんに報告していれば、彼女は心底楽しそうに笑ってみせるけど。
残念ながらわたしはそんなにポジティブにとらえられないわけで。
「ど、どうしよう……」
だってもともとは会長を好きだったのに、紫逢先輩と付き合っちゃったんだもん……!
別れる気はないけど、好きな人と……って考えるだけで心臓が痛い。
っていうか、堂々と紫逢先輩が挑発しちゃったせいで、帰りはちーくんが「一緒に帰ろ」って言ってきたし、会長にも「どこか連れて行ってやろうか?」って誘われたし。
結果的に両方断ったけど、このままじゃわたしの心臓がもたないのは言うまでもない。
「でもそれって、悩むことあるかしら?」
「え……?」
「まわりの人間関係とか、将来とか。
そういうの抜きにして、瑠璃がいま一緒にいたいって思うのは誰?」
「わたしが一緒にいたいって思う人……」
それは……それ、は。
「前にも言ったけど、何もこの先ずっとその人といなきゃいけないってわけでもないじゃない?
たとえば瑠璃の気持ちが相手とうまくいってたとしても、別れないって保障はないんだし」
「……うん」