そのなみだに、ふれさせて。
・見方は変わりゆき感情は移りゆく
◆
「南々さん、夕飯ごちそうさまでした」
「ううん、またいつでも来てちょうだいね」
20時前。玄関で、ちーくんをお見送りする。
南々ちゃんの腕の中にいるのは南々ちゃんの娘で、先月2歳になったななみ。どうやら、ちーくんに懐いているようで。
「ちー…く、」
「ふふ。またね、ななみ」
名残惜しそうに腕を伸ばすななみに、ちーくんは優しく声をかける。
頭を撫でられると嬉しそうに顔を綻ばせるから、思わずわたしの頰もゆるんでしまった。
本当に、ななみはかわいい。
「それじゃあ、また明日」
「うん、気をつけてね」
ついでにわたしの頭も撫でたちーくんにそう言うと、彼は「お邪魔しました」と言って、帰っていった。
それと同時に、一瞬玄関には沈黙が訪れて。
「さて。
遅くなる前にお風呂入っちゃいましょうか」
「南々ちゃん、先にななみと瀬奈(せな)と一緒に入っていいよー。
はやくしないと、ななみ寝る時間でしょ?」
「ありがとう、ならお言葉に甘えるわね」
リビングにもどって、南々ちゃんは「瀬奈」と彼を呼ぶ。
ソファには座らず、床に座ってソファに背を預けるような形で宿題をしていた瀬奈。呼ばれると、「風呂?」と首をかしげた。