そのなみだに、ふれさせて。
血の繋がりよりももっと大事なものがあることを、わたしはもうわかってる。
南々ちゃんが。……お母さんに何度も頭を下げてわたしのことを頼んでくれたのが、その証拠だ。
どっちが母親らしいのか、なんて。
間違いなく「南々ちゃん」と答えられる現状に、もはや笑えてしまう。
「……あら。いつみ帰ってきたんじゃない?」
「え、うそ。まだ18時前だよ?」
いっくんもっと遅い時もあるよね?と。
玄関からリビングに繋がるドアをじっと見つめていたら、かちゃりと開いて「ただいま」を言ういっくん。……ほんとに帰ってきてたみたいだ。
「おかえりなさい、いっくん。早いね?」
ぱっとソファを立って荷物を受け取ろうとしたら、「重いから大丈夫だよ」って彼は微笑んで。
南々ちゃんにもおかえりを言うと、洗面所に立ち寄って手を洗ってから彼は一度2階に上がっていく。
次に降りてきたときは、部屋着でかなりのリラックスモード。
……それでもかっこよく見えちゃうのが、いっくんだけどね。
「会議がひとつ失くなったんだよ。
デスクで仕事しようかとも思ったが、どうせやるなら家でやっても同じやった方がいいだろ」
そろそろ起こさないと、子どもたちが夜に眠れなくなってしまう。
南々ちゃんにそう言われて瀬奈とななみを起こそうとしたら、いっくんはわたしにストップをかけて。
「瑠璃、5秒だけ目瞑れ」
飲み物をとるついでに彼女に歩み寄ると、わたしにそんなことを言う。
でも逆らえる間もなく素直に目を閉じて5秒カウントしてから、目を開けた。
至って、いつも通り。
だけどいっくんは含んだように口角を上げているし南々ちゃんは困ったように笑っているから、なんとなく何があったのかは察した。
……仲良しだなぁ。