そのなみだに、ふれさせて。
それを瞬時にいっくんは気づいて、だからななみを南々瀬ちゃんに任せて、一緒に行こうと提案した。
……子どものことを本当に、大事に思ってる。
瀬奈は「瑠璃も一緒に行くか?」って聞いてくれたけど。
ううん、と首を横に振って、それを断った。
瀬奈は、いっくんとお出掛けできるのはきっと楽しみだろうし。
逆にいっくんも、自分の子どもと出かけることができるのは楽しみだろうし。
「ななみ、も」
コンビニに着くすこし前で、ななみがそう言っていっくんを見上げる。
どうやら彼女は彼女なりに、「ななみを任せて」という言葉を理解していたようで。連れて行ってもらえないことを感じ取ったみたいだ。
「ん。ななみも、一緒に出掛けような」
いっくんの言葉で、うれしそうにふにゃっと笑ってみせる。
それがあまりにも可愛いから、わたしの頬もゆるんでしまった。
「瑠璃も、今度一緒に出掛けるか」
コンビニに入ると、向かうのはスイーツの陳列棚。
いっくんに抱き上げられたななみは、きょろきょろと店の中を見回していた。
あれ、今まで隣にいた瀬奈がいなくなってる。
「え!? わ、わたしはいいよー。
その時間を子どもたちに使ってあげて?」
「何言ってるんだ。
お前ももう、俺らの子どもみたいなもんだろ」
「……いっくん」
前ならきっと、自分の両親のことを思い出して、嬉しいくせにその言葉に傷ついた。
だけど今はもう違う。……素直にそれに、「ありがとう」って言える自分がいる。