そのなみだに、ふれさせて。
◆
隣の部屋で眠っている瀬奈を起こしてしまわないよう、静かに扉を開いて。
そろりとリビングに降りて扉を開くと、ソファに座って仕事しているいっくん。そして。
「南々ちゃん寝ちゃったの?」
「ああ。疲れてるんだろうな」
そのいっくんに寄りかかったまま、眠っている南々ちゃん。
支えてあげているから右手がすごく使いづらそうなんだけど、南々ちゃんを離すという考えはないらしい。……さすがラブラブだ。
「瑠璃も、あまり夜更かしするなよ?」
「うん。
もう寝ようと思って、カップだけ洗いに来たの」
キッチンに足を踏み入れ、さっきまで部屋でカフェラテを飲んでいたカップ洗う。
それを終えて振り返ったら、いっくんと目があった。
「……? どうかしたの?」
「いや。何か良いことでもあったか?」
「え、別に何もないよ?」
否定しているわけではなく、本当に何もない。
そう伝えたのに、いっくんは「夕飯の前くらいからだな」と小さくつぶやいたあと。
「ああ、男から連絡あったからか」
「はい……!?」
とんでもない爆弾発言をしてみせた。