そのなみだに、ふれさせて。
つい大きな声を出してしまったから、ハッと口をつぐむ。
だけど南々ちゃんは「ん、」と小さく身じろぎしただけで、どうやら起きてはいないらしい。
「連絡あっただろ? 夕飯の前に」
「う、うん。確かに連絡はあったけど、」
「そこから機嫌良いのは……無意識か?」
紫逢先輩から夕飯の前に連絡があったのは事実だ。
どうしたのかと思ったら、『声聴きたくなった』なんて言われて。甘い言葉を言われ慣れてないから、いきなり言われると本当に恥ずかしい。
「無意識も何も、いつも通りだよ?」
ちょっとだけ話したあと、『今度デートしない?』って誘われて。
うなずいたくらいで、別に機嫌に変わりはない。
「ふぅん?」
「……もー。なにその表情」
「いや?
彼氏と仲良くやってんなら、それでいいんだよ」
……そもそもわたし、紫逢先輩から電話だって言ったっけ?言ってないよね?
言ってないのに、なんでバレてるんだろう。
「また家に来てもらえばいい。
前回は、落ち着いて話す時間もなかっただろ。俺も途中で呼び出されて仕事行ったからな」
「あ、うん。そうだね。
また家に遊びに来てくださいって言っとく」
いろちゃんと呉ちゃんは、最後まで「彼氏なんてだめだ」って文句を言ってたけど。
いい加減シスコンが重度すぎるよ、ふたりとも。