そのなみだに、ふれさせて。



いっくんもなんだかんだそう思っているらしい。

今度いっくんから、いろちゃんと呉ちゃんに「いい加減にしろ」って言ってもらおう。



──なんて。そんなことを思っていた、翌朝。

いつものように支度を終えて、呉ちゃんが南々ちゃんたちを迎えに来たかと思うと。



「瑠璃、千勢来てるわよー」



玄関から、そんな南々ちゃんの声だけがリビングに届く。

おどろいて顔を出せば、「おはよう」を言って微笑んでくれるちーくん。



「おはよう……どうしたの? ちーくん」



尋ねながら、うしろに停まっている呉ちゃんの車に向かって手を振る。

車が発進したのを見届けてから顔を上げれば、ちーくんは「んーと、」と前置きして。



「学校の支度、できてる?」




わたしの問いかけには答えずに、同じように質問で返してきた。

……わざとらしく逸らすってことは、聞いても教えてくれないんだろうなぁ。



「できてるよ。

でも食器洗ってから行くから、まだかかるけど」



「そっか。じゃあ待ってるね」



「それなら、ちーくんも中入って」



外で待たせるわけにはいかないからとリビングに通してキッチンに入ると、カウンター越しにちーくんが瀬奈の隣に座ったのが見える。

相変わらず可愛げのない参考書を見つめていた視線は、ちーくんに向いた。



「ちーが朝から来るなんてひさしぶりだな」



「瑠璃と一緒に、学校行こうと思って」



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