そのなみだに、ふれさせて。
南々ちゃんが子どもたちとお風呂に入ったあと、そのまま子ども部屋にふたりを寝かしつけに行った。
その間にわたしはお風呂に入って、着替えてからリビングに続くドアを開ければ。
「いっくん……! おかえりなさい」
「ただいま」
リビングにいたのは、南々ちゃんの旦那さまである、いっくんこといつみくん。
スーツ姿っていうだけでもものすごくかっこいいのに、ネクタイを緩める気だるげな表情からは、危うげに色気が香る。
いっくんの実家は最先端医療グループ、珠王。
世界で最も優れた医療機関とも言われ、跡継ぎであるいっくんは外科医だ。
「南々ちゃん、今子ども部屋に行ってるよ」
「ああ、だと思った。
……まだ戻ってこねえだろうし、先に風呂入ってくる」
とはいえいまは外科医の仕事よりも、跡継ぎとして医療現場の改善に徹しているらしい。
もちろん緊急でオペを担当することもあるから、日々練習は欠かさないみたいだけど。
「いっくん、ご飯は?」
「軽くでいい。
南々瀬が下りてきたら伝えておいてくれるか?」
「はぁい」
一度2階の寝室に行ってスーツから着替えてから、お風呂に向かったいっくん。
それから少しして、南々ちゃんがリビングに入ってきた。
「南々ちゃん、いっくんご飯軽くでいいって。
わたしも何かお手伝いしたほうがいい?」
「ううん。
手間がかかるものじゃないから大丈夫よ」