そのなみだに、ふれさせて。



確かに、そうだと思う。

わたしはあの頃、ロイヤル部にいたおかげでみんなとつながりを持つことができて、仲の良いメンバーを指名した。



だけど、もし。

ロイヤル部に所属することなく、単に一生徒として学園生活を送っていたなら、生徒会長になった時に指名は随分と迷ったことだろう。



きっと、仕事ができるかできないかで決めたはず。

そんなメンバーで上手く機能するのかと問われたらそれは分からないし、仲が良くなれていたのかと問われても、微妙な返事しかできない。



そういうものだ、人のつながりは。

誰かが仲良くなろうとしない限り、関係性はずっと平行なまま。



そして瑠璃がいま所属する生徒会には、おそらくそれが無い。

だからずっと、うわべだけの関係が続いてる。



「これはあくまでわたしの勝手な予想だけど……

瑠璃はおそらく、仲良くなることを拒むわ」



わたしの考え方というのは、どうやら人と違うらしい。

あの頃わたしは、「別れがくるから関わらない」のではなく、「別れまでを謳歌したい」という気持ちで、残りのタイムリミットを楽しんでいた。




カウントダウンを刻んでいたはずの数字はいつの間にか消え去り、代わりに数字は上昇。

そんなこんなで、今もこうやって彼のそばにいるわけだけれど。



「お互いのことを知らなきゃ、

ぜったいに仲良くなんてなれないじゃない?」



昔馴染みの知り合いなら良かった。

だけど何かを経験して、乗り越えて、引きずって生きている思春期真っ最中の高校生。



何も知らない無垢な子の方が、圧倒的に少ない。

そして事実、瑠璃には瑠璃の過去がある。



「でも瑠璃は、それを嫌がるから」



ふたつの表札がかかっていたあの家のことも。

今はそれぞれ自立して離れ離れな兄妹のことも。



わたしたち家族の家に、身を置いていることも。

きっとあの子は、何一つ、話したがらない。



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