そのなみだに、ふれさせて。
「……わたしに可愛げ求めてたんですか」
「いや? まったく」
「………」
……はっきり言い切るほど何も思っていないのなら、どうしてわざわざ言うのか。
今にはじまったことじゃないけれど、この人は分かりにくくて困る。
「会長のそれも、似合わないですよね」
視線を向けた先は、彼の手にある『ミルクセーキ』。
いかにも会長は、甘いものが好きじゃなさそうな顔をしているのに。
甘いものが好きなわたしですらもあまり飲まないそれを頻繁に飲んでいるなんて、ギャップも萌えを通り越してびっくりだ。
……たしかに、美味しいとは思うけど。
「……まだ、気にしてんのか?」
あ、誤魔化された。
……そう思ったのは、ほんの一瞬で。
「気にしてる?」と反芻すれば、彼は視線をどこか遠くに投げたまま。
生徒会のこと、と分かりやすく告げる彼に、胸の奥が引き攣った。
「……お前は、」
「あ、雨降ってきましたよ会長。
濡れるので、はやくもどりましょう」
手に感じた冷たい感触。
言うが早いか立ち上がって彼の服を引けば、何か言おうとしていた会長は、言葉を呑んでベンチを立つ。
屋上には屋根がない。
だから足早に校舎内に戻って屋上の重い扉を閉ざすと、その途端に強くなった雨の音が、どこか鈍く聞こえた。