そのなみだに、ふれさせて。



一体いつまで、見て見ぬ振りをするんだろう。

世の中にはやっぱり、平等なんてないのに。



わたしが社長として、世に才能の卵を生み出す間。

潰れていく企業などきっと、いくらでもあるのに。



「……このまま低下が続くようなら、

被害が最低限のうちに、解散させるらしい」



「………」



「あいつらの両親が、あいつらが幼い頃から貯蓄してきた分があれば、今はまだマイナスにはならずに済む。

その代わり、お前に頼みがあるんだと」



「頼み……?」



何もできないわたしへの頼みってなんだろう。

それは、わたしにできることなんだろうか。




「解散させる場合、従業員たちの新しい就職先を、全員分決めてからにしたいと社長が言っているらしい。

……だから、条件に合う場合は、お前のところにも引き抜けないかって」



「………」



「本当はお前に会って話したかったらしい。

無理ならせめて連絡するって言ってたから、後でお前にもまた連絡が来るはずだ。これはあくまで、俺が先にお前に伝言しただけ」



「……うん」



「ルノたちには、既に了承の返事をもらってるらしい。

まあ、おそらく八王子の企業だけでも十分見つかるくらいに、あいつらの家は企業展開が広いからな。珠王でも、空きがないか確認する約束をした」



「……わかった。

椛から連絡が来たら、直接返事するわ」



もちろん、断ったりはしない。

それ相応の能力があるとすれば、わたしの方でも受け入れができるようにするだけのことだ。



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