そのなみだに、ふれさせて。



「本当は俺か兄さんのところで、って話だったんですけど。俺のマンションは中学まで遠いですし、兄さんは仕事場の近くに住んでます。

……もちろん弟と妹なので本当に何も問題はないですけど、もし兄さんの教え子が兄さんたちのことを目撃して瑠璃や翡翠との関係を色々疑われるのも面倒ですし、」



「俺はいいけど〜。

……瑠璃や翡翠に余計なストレス与えたくねえしな」



「ここなら、中学も徒歩で通える距離です。

……だから。どうか、お願いできませんか」



ふたりに深く頭を下げられて、ぐっと胸が詰まった。

……一緒に支えあってきたメンバーなのに。



そんな彼らに、頭を下げさせてしまった自分が、

あまりにも不甲斐なくて。



「……どうして、わたし?

判断するのは、いつみだと思うけど」



彼もどうやら、離婚の話はさっき聞いたばかりのようだし。

それなら当然、この話だって聞いていないはず。なのにどうして、頭を下げられるのがわたしなのか。




「もちろん、いっちゃんにだって後でお願いするよ。

……でも、優先すんのは南々ちゃんの意見だろ。子どもいて、ふたり目の出産も控えてんのに、中学生ふたりの面倒見て欲しいって無茶言ってんだから」



「………」



「無理なら無理って言ってくれて良いよ。

それが最善策だと思っただけで、まだほかに解決法がないわけじゃねえんだし」



中学生なんていう思春期の不安定な時期にそんな出来事があれば、精神状態が良くないことくらいわたしにもわかる。

ぎゅっと、自分の掌を握りしめた。



「……構わないわ。

特に瑠璃は女の子だから、男だけの環境で不安定な時期を過ごすのは厳しいでしょうし」



もちろん、父親ひとりの元で育ってきた子だっているけれど。

つい最近まで母親がいた女の子が、いきなり男だけの環境に慣れるのには、すこし時間がかかる。



「椛。……あなたのお母様は?」



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