そのなみだに、ふれさせて。



そんなわたしの思いが届いたのか、数日後、いきなり夕帆先輩が「新年会しよう」と電話をかけてきた。

ななみを出産してすこしの間は自宅で仕事をしていたわたしも、いまはもう普通に働いているけれど。



土日なら大丈夫なわたしや呉羽、比較的それに合わせやすい椛は良いとしても。

普段日本にいないルアや、仕事が忙しい夕陽が無理なんじゃ、と思っていたのに。



「遅くなったけど、あけましておめでとう」



1月下旬のリビングには、馴染みのメンバーが集結していた。

わたし、いつみ、夕帆先輩、莉央、椛、ルノ、ルア、呉羽、夕陽という元生徒会メンバーに加えて。



いま居候で我が家にいる瑠璃と翡翠。

そして瀬奈にななみ、という結構な数の面々だ。



「あけましておめでとう。

なんか会わないうちに瀬奈もななみも大きくなったなー」



そう言って、瀬奈の頭を撫でている夕帆先輩。

すこし前から人見知りするななみは、ずっとわたしの腕の中だ。夕帆先輩が抱っこすると言ってくれたのだけれど、完全に嫌がってしまった。




「兄貴嫌がられてんじゃん。ざまあ」



ケラケラと笑っている夕陽。

兄弟仲は昔に比べて随分と良好なのに、どうしてすぐ揶揄おうとするんだろうか。



「ってかあれだな、

俺よりいくみの方がよく会ってるもんな」



「そうですね。8プロの人気モデルですから」



そんな夕陽を完全スルーして、わたしに話しかけてくる夕帆先輩。

いくみさんはいつみのお姉さんで、1年前に夕帆先輩と結婚した。つまりわたしと夕帆先輩は義理の兄妹でもある。



そして夕帆先輩といくみさんは、実はデキ婚だ。

娘のみくちゃんは、ななみと数日違いで生まれた女の子。いくみさんは王学の前任の理事長秘書だったけれど、今は8プロの人気モデル。



でもテレビには一切出演しない、雑誌だけのモデルさん。

彼女がモデルになった経緯は色々とあるので割愛するが、8プロ所属のため、夕帆先輩よりもいくみさんと会う機会の方が多い。



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