そのなみだに、ふれさせて。
──1年前、6月。
いつものように子どもたちを寝かせてから1階におりると、リビングにいるのは翡翠だけ。
数ヶ月前に言っていた通り、3年生になっても、瑠璃と翡翠は我が家で過ごしている。
そして3年生のビッグイベントといってもいい修学旅行を昨日終えたばかりで、瑠璃はすでに疲れて部屋で就寝中。
ちなみに現在の時刻は、21時前。
「翡翠、はやくお風呂入って寝ちゃいなさいね。
明日も代休だけど、夜更かししてちゃだめよ」
「うん、わかってるよ。
でも南々ちゃんに、ちょっと話があって」
「話?」
テレビに近いリビングのソファからではなく、すこし離れたダイニングチェアからテレビを遠目に見ていた翡翠。
彼の前の席に腰掛けると、翡翠は無言でテレビを消した。
「まだ……いろ兄にも呉兄にも、瑠璃にも。
誰にも話してないことで、」
「……うん」
「気が早いかもしれないけど、あくまで俺の考えのひとつだってことで聞いてくれる?」
まっすぐに、わたしを見つめる翡翠。
その表情を見て、新年会と称してみんなが集まった時、翡翠が憂えた表情をしていたのを思い出した。
どうしてなのかはわからない。
ただ直感的に、あの時わたしが抱いた違和感について話してくれるんだろうと思った。
「ええ、わざわざ許可を取る必要もないわ。
思ったことを素直に言ってくれて構わないのよ」
「それじゃあ……まず、」