そのなみだに、ふれさせて。



「でも俺が留学したいって言ったら、また瑠璃のことで困るはずだから。

……だからまだ、3人には言えなくて」



「……うん」



「ごめんね、

困らせるのはわかってるんだけど……」



申し訳なさそうな顔をする翡翠に、息が詰まる。

椛と呉羽が、双子の面倒を見て欲しいと頼んできた時も、同じ気分だった。……彼らは。



椛は、呉羽は、翡翠は、瑠璃は。

頼るのが極端に苦手で。……そして、いつも誰かに迷惑をかけないようにって、そんなことばかり考えていて。



「……椛と呉羽には、わたしから話すわ。

でも翡翠が留学したいことは言わないで、高校生になってもここで面倒を見る予定ってことだけ」



その根底にあるのは、きっと。

複雑だった家庭環境が原因だと思う。……母親がふたりいて、そのうちのひとりは血のつながりもない、名前だけの母親。




言ってしまえば赤の他人。

その複雑な環境を壊さないように、誰もが気を遣っていたはずだ。



そして椛を除く3人の子どもを、置いて出ていった母親。

もはや椛が定期的に面会するだけで関わりのない両親を、4人は頼る気もないんだろう。



それぞれが、この先のことを真剣に考えているけれど。

彼らの口から、「両親と」という言葉は出てこない。自分たちだけでなんとかしようと、必死に足掻いてる。



唯一信じられる、

兄妹のつながりだけは、切れないように。



「そうすれば、瑠璃はこの先もうちで預かることになる。

翡翠が留学したいことをみんなに話すのは、ふたりの合格が決まってからでも遅くはないでしょう?」



「……、うん」



「大丈夫よ。瑠璃のことはひとりにしないから」



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