そのなみだに、ふれさせて。
◆
──3ヶ月前、3月。
「乾杯」の声でグラスを合わせて、みんなでふたりに向かって「おめでとう」を告げる。
何を隠そう、瑠璃と翡翠の合格祝いだ。
ふたりとも王学に進学することが無事に決まったのはすこし前のことだけれど、集まる機会が無くて結果ふたりの卒業後になってしまった。
とはいえそれでも予定は合わず、今日はいつみとわたし、椛と呉羽の大人4人と。
瑠璃と翡翠、瀬奈とななみの子ども4人だけだ。
ほかのみんなは、後日またお祝いしてくれるらしい。
そう伝えればふたりとも嬉しそうに笑ってくれたし、今この場で見せてくれている表情だって、何の曇りもないけれど。
「あの……
実は俺、聞いて欲しいことがあって」
翡翠がそう切り出したのは、夜も遅くなって瀬奈とななみを寝かせるために寝室に行っていたわたしが、リビングにもどってきてからだった。
みんなの視線を受けた彼は、「どうした〜?」という椛の問いかけに、薄く笑って。
片割れである瑠璃のことを、じっと見据えた。
「……どうしたの? 翡翠」
「南々ちゃんには、先に話したんだけど、」
「……? うん」
「……俺、留学したいと思ってるんだよね」
瑠璃が、目を見張る。
ゆらゆらと揺れるその双眸は、あきらかに、翡翠を傷つけないようにするための言葉を探していた。
「留学って……いつ?」
「できるだけ早く。高1でどうかなって」