そのなみだに、ふれさせて。



せめていっくんの誤解だけは解いておこうと、念押しする。

本当は誤解じゃないけど、いくらなんでもこの話題は恥ずかしすぎる……!



「……別に悪いことじゃねえんだし、

俺は瑠璃に好きな男ができようと反対しねえけど、」



「………」



「……変な男に引っ掛からないようにな」



ぽんぽんと、わたしの頭を撫でてそう言ういっくん。

瀬奈やななみと同じくらい愛情を孕んだそれに、唐突に泣きたくなってしまった。



「変な人じゃないから、だいじょうぶだよ……」



みんなが憧れるくらい、魅力的な人。

わたしなんかじゃ釣り合わないくらい、素敵な人。




「でも、」



それでも隣に並びたいって、おこがましいけど思ってしまうくらい、好きで。

……出会って3ヶ月なんて知らないことの方が、多くて。



「……彼女いるんだって」



だけどそれは知っていたかった、なんて。

そんな身勝手な考えばかり浮かんでしまうわたしにはきっと、恋愛なんて向かないんだと思う。



「瑠璃」



深い声色で名前を呼ばれて、無意識にうつむかせていた顔を上げる。

そうすれば漆黒の瞳と目があって、いっくんはわたしを安心させるみたいに。どこか言い聞かせるみたいに、優しく言葉を紡いだ。



「たしかにそれなら、叶うかどうかは分からないし、正直むずかしいかもしれないな。

……でも。お前がその相手のことをうわべなんかじゃなくて、本気で大事だと思えるなら、」



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