そのなみだに、ふれさせて。
仲が良いと言うには程遠い。
知った気になっていただけで、彼について知っていることなんて、ほかの子たちの知っている情報に、わずかな尾ひれがついた程度。……でも。
「まっすぐに想ってるなら。
……お前の気持ちを迷惑だなんて、相手は思わねえよ」
「……いっくん」
「安心しろ。
お前は、お前自身が思ってるよりもずっと綺麗だ」
澱みなく言い切られて、こくこくと頷くことしかできない。
優しくて、まぶしくて。いっくんと南々ちゃんが両親である限り、瀬奈とななみはきっとしあわせなんだろうなって、そんな馬鹿げたことを思うくらい。
「ありがとう……いっくん」
自分の世界は真っ暗なんじゃないかって、思ってた。
まわりを見ようともしないで、ただ自分から視野を狭めて。見ようとすれば見えたはずなのに、答えが白黒ついてしまうことに怯えてばかりいた。
「わたし、がんばれるよ」
「……ああ。でも頑張りすぎるなよ」
白か黒だなんて、誰も決めてない。
その色だって決めつけたのは、わたし自身。
「お前は南々瀬に似て無理しがちだからな」
「……光栄です」
「ばか。
似るならもっと魅力的なところにしろよ」
ふっとやわらかく笑ったいっくんに、わたしの頬も、自然とほころぶ。
だいじょうぶ。……たとえ家族が途絶えようと、わたしたち兄妹の名前は、ちゃんと繋がってる。