そのなみだに、ふれさせて。



「おはよう、ございます」



いっくんを見送り、仕事先に向かう前に保育所に寄るため、呉ちゃんがお迎えに来ると、ななみを連れて出る南々ちゃんを見送り。

小学校に行く道が途中まで同じだから、瀬奈と家を出て。



会長に会いたいって気分じゃなかったけど、教室にいるのも肩身がせまい。

副会長であり、この学校で最も信頼の厚い女子生徒と言っても良いあけみ先輩と違って、わたしはほかの女子生徒に良く思われていないし。



なんなら、使っていないけれど与えられている生徒会棟の個人部屋に逃げよう、なんて思いながら。

リビングの扉を開ければ、中にいたのは。



「おはよう、麻生」



「瑠璃おはよ。昨日途中で帰ったけど平気?」



菅原先輩と、あけみ先輩のふたりだけ。

会長がいないことに内心ほっとしながらリビングに足を踏み入れて、あけみ先輩の問いかけにうなずいた。




「だいじょうぶです。

そのあと普通にちーくんと勉強してたので」



「ならよかった。

……にしても、瑠璃は萩原と仲良いわね」



「昔からいっしょなので……

というか、それを言うならあけみ先輩だって葛西先輩と仲良しじゃないですか」



「あたしとあいつは仲良くないわよ」



……仲良しなんだから、そんな即答しなくたって良いのに。

この遠慮のない距離感もまた、幼なじみだからなのかなぁ、なんて。



ぼんやり思っていれば、ふいにかちゃりと扉が開く。

それと同時に身体をこわばらせてしまったけれど、姿を見せたのは話題に出ていた葛西先輩で。



「おはよー」なんて言いつつ、ふあっと彼があくびをこぼしているのは、全然いいんだけど。

……え、これツッコんで聞いていいの?



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