そのなみだに、ふれさせて。
……え、いまこの人なんて言った?
"こう見えて俺の実家、茶道の家元だよ"……?
「え、ええ……!?」
「ま、ウチはメディア避けてるから知らなくても仕方ないか。
あけみんとこは、お婆ちゃんよくテレビ出てるよね」
茶道の家元って、普通に凄いんじゃ……と、感心するわたしをよそに。
そう話を振られたあけみ先輩は、言いたくなかったのか心底嫌そうな顔で葛西先輩を睨む。それから、はあっとため息をついて。
「うちは華道の家元なの。
……だからあたしとコイツは幼なじみなのよ」
「な、るほど……」
家元同士だから交流があるってことなのか。
そういえばテレビでたまに見る華道家の女性が宮原だったような、と。薄ら思いながら、顔を上げる。
「あの、菅原先輩」
「ん? どうかしたの?」
「菅原先輩は、知ってたんですか?」
おどろくわたしとは違って、彼は平然としているし。
もしかして付き合いが長い分、知っていたのかな、と。率直に聞いてみれば、菅原先輩は優しく笑った。
「葛西も宮原もうちのお得意様なんだよ。
王学の茶道部と華道部の着物、どこから手配されてるか知らない?」
「えっと確か、菅原、呉服店……」
……あれ。 あれ?
菅原って、先輩の名字じゃないか。