そのなみだに、ふれさせて。
「昨日の生徒会の指名なんですけど。
……すみません、お断りします」
「……理由は?」
宮原先輩が、首をかしげる。
聞かれることを予測していたみたいに、先輩ふたりの前に、ピッと翡翠が差し出したのは。
『王宮学園留学申請書』と書かれたプリント。
すでに記入されているそれを見て、宮原先輩はふっと息をついた。
「そういうことなら、どうしようもないわね」
「そうだね。
ここに理事長が承認の判子を押せば、留学予定生徒として絶対生徒会には入れない」
うんうんと、納得しているふたり。
何か起こると思っていたわけではないけれど、穏便に話が済みそうで、無意識に入っていた肩の力をホッと抜く。
「じゃあ、この話は俺らから直接会長に、」
「その必要はねえよ」
かちゃり。
開いた扉から顔をのぞかせた彼を見て、緩んだ糸がピンと張ったような気分になった。……入学式で一度だけ見かけた、この学園の、トップ。
「おかえり、会長。
帰ってきてくれたなら話は早いわね」
「さっき理事長に出くわして聞いたんだよ」
気だるげにそう返して、彼はソファに腰掛ける。
その瞳がまっすぐに見据えたのは、なぜかわたしで。
「双子、だったな。
……妹の方も一緒に留学するのか?」