そのなみだに、ふれさせて。



問いかけられて、「えっ」と驚いてしまう。

わたしと翡翠はあまり似ていないせいで、一緒にいても双子だと思われることは少ない。だからこそ、かっこよくてモテる翡翠を好きな女の子から敵対視されることも多いんだけど。



……どうして双子だってわかったんだろう。

わたしが会長を見たのは入学式の一度だけ。しかもわたしが一方的に見たから、まさか彼がわたしを覚えているなんてことはないだろうし。



役員に指名した翡翠の妹だったから、

偶然知っていた、だけ、かな……?



「あ、いえ……

わたしはこっちに残るので、」



「へえ。……ならお前がなるか?」



「……へ?」



「生徒会役員。

指名制で断られた場合、リストから別の人間を選出できる。……俺の記憶違いでなければ、お前の名前もたしかリストにあったはずだ」




宮原、と。

呼ばれた彼女は、それだけで指示を理解したように奥に引っ込んで、すぐに1冊のファイルを持ってもどってきた。



手渡されたそれをぺらぺらと捲る会長を、信じられない思いで見つめる。

……え? あ、あれ?



翡翠が役員の話を断りに行くって言ったから、それについて来て……

なんで、わたしが、代わりに……?



「や、役員なんてむりです……!

わたしそういうのすごく苦手でっ、」



「でももし俺が最初からお前を指名してたら?」



「え、」



最初から? 翡翠じゃなくて、わたしが?



< 62 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop