そのなみだに、ふれさせて。
・何事も匙加減とは理不尽なもので
◆
「あらやだ、大正浪漫っぽくなったわね。
やっぱり黒髪なのが唯一残念って感じ」
「でもかわいいよ?
和洋折衷って言葉がよく似合うよね」
「あ、ありがとうございます……」
仲良くなりましょう、的な発言をした、翌日。
わたしは朝から、幼なじみコンビの着せ替え人形にされていた。……いや、着せられたのは、赤い花柄の着物一着なんだけど。
「麻生、華道とか茶道やってみれば?
似合いそうだし、なんなら俺が教えてあげるよ」
「やめときなさい、瑠璃。
コイツに教えてもらったら、対価として遠慮なく喰われるから」
この着物はどうやら、菅原先輩が実家からわざわざ送ってもらったらしい。
そしてあけみ先輩が着付けをしてくれたのだけれど、実家が華道の家元だと言っていただけあって、すごく丁寧に着せてくれた。
「っていうか、
なんでわたし着物着せられてるんですか……?」
菅原先輩もちーくんも、お仕事してるんですけど。
なんならわたしも、はやく残りの仕事を済ませてしまいたいんですけど。
「ん? 麻生が仲良くなりたいって言ってたし。
とりあえず昨日俺らの話にびっくりしてくれてたから、俺らの共通点を持ってきたんだよ」
「ま、用意したのはスガ先輩だけどね。
ああ、そうそう。この着物、先輩から瑠璃へのプレゼントらしいから」
「……!? プレゼント!?」
目を見張って、ばっと先輩を見る。
そうすれば彼はシルバーフレームの奥の瞳をやわらかく細めて「うん」と言った。……でも。
これどう見たって高級品なんですけど……!
着物って高いのに、その中でもあきらかに高級だってことが素人の目から見てもわかるレベルなんですけど……!