そのなみだに、ふれさせて。
「わたし、ただ仲良くなりたいって言っただけですよ……?
なのに、こんないいもの……」
「じゃあ……そうだな。
俺から麻生への誕生日プレゼントってことにしておこう。麻生誕生日いつだっけ?」
「11月、です」
「なら半年近く早いプレゼント。
その時期だと俺は受験勉強で忙しいだろうし、今のうちに、ってことで」
ね?と。
先輩がそこまで言ってくれているのに、断れるはずもなく。お礼を言えば、彼は優しく笑ってくれた。……本当にこの人は、優しすぎる。
「……それより俺、気になってたんですけど」
ぽつり。
今までずっと黙っていたちーくんが、不意に声を落とす。それを聞いて、彼の方へと視線を向けた。
「会長はどうしたんですか?」
「ん? 会長ならまだ……って、あれ。
もう9時過ぎてんじゃん。寝てんのかな」
「……会長に限ってそんなわけないでしょ」
葛西先輩とあけみ先輩の言葉を聞きながら、そういえば確かに会長が遅いなと思う。
朝は部屋にいることが多いけど、いつも9時を過ぎたらおりてくるのに。
「生徒会棟にいないんじゃない?
朝部屋を出た時、どこかに行くのを見かけたよ」
「え、出掛けてんの?
あの人ああ見えて超めんどくさがり屋なのに?」
いや、いくらめんどくさがり屋でも、出かけるときは出かけると思うけど。
連絡しますか?と問えば先輩たちがうなずくから、テーブルに置いてあるスマホを取ろうと、足を踏み出したとき。