そのなみだに、ふれさせて。
……なんか、苦手、だ。
こうやって的確に、核心を突いてくる人。
「それならお遊びでも、自分のこと好いてくれてる人間と付き合った方がよっぽどいいと思うよ。
……ああ、遊びっていっても麻生のこと泣かせないって宣言したし、手は出さないからね」
「……それ、先輩にメリットあります?」
「うん、かわいい女の子と付き合えるし。
……でも俺、麻生相手に、メリットとかデメリットとか考えて付き合うの嫌なんだけど」
頬杖をついて、わたしを見る葛西先輩。
「じゃあ、」と。口を開いたわたしのことを、彼の色の違う双眸が追う。
「教えてください。
……どちらが、本物なんですか?」
賭け、だ。
まさか信用なんてできる関係じゃない。だから完全に賭け。……もしわたしの望んだ、答えなら。
「こっち」
ふわり。
やわらかく微笑んだ先輩が、右目のそばを指で軽くとんとんと叩く。瞳は、ヴァイオレット色だった。
「つまり両目とも、ヴァイオレット……?」
「そ。カラコン外してあげてもいいけど、残念ながらいまは替えを持ってないから、気が向いたら今度外して見せてあげる。
……さて、俺は麻生の質問にちゃんと答えたよ」
「なら、もうひとつだけ。
これの答えで、付き合うか決めます」
「……それなら、仕方ないなぁ。
いいよ。ひとまずその質問を聞こうか」
「どうして。
あえて片方を、カラコンにしてるんですか?」