そのなみだに、ふれさせて。
「……ほんと、麻生はかわいいね」
「もう。……なんですか? 急に」
「急じゃないよ。
……ずっとかわいいなって思ってるんだから」
ここがカフェじゃなければ抱きしめてるのに。
それが出来ないから、ゆっくりと頬に触れていた手を離す。それから、俺の発言に照れくさそうにして、カフェオレに口をつける彼女を一瞥してから。
「やっぱり俺と付き合わない?」
冗談混じりな口調に、一匙だけの本音。
麻生は一瞬考える素振りを見せて。
それから。
「いいですよ」と、ちいさくつぶやいてみせた。
……え。ちょっと待って。
俺から言っといてなんだけど、いいの?
「でもわたし、ずるいですよ。
会長のことあきらめたくて、頷いてますから」
「……それは全然いいよ」
「……葛西先輩」
「ん?」
「わたしは先輩のその瞳の色。……好きです」
さて仕事、と。
パソコンの液晶に視線を落とす麻生を見て、内心苦笑する。……困った、な。