そのなみだに、ふれさせて。
抱きしめたって何の興味も示さない表情。
……これが会長相手だったら、きっとどうしようもないぐらい女の子の顔をするくせに。
「好きだよ」
「……え?」
「麻生のことが好きだよ。
……きっと信じてくれないだろうけど」
おどろいたように、目を見張って。
じわじわと理解していくように熱を帯びていく頬。言葉を探そうとしているのは見ていればすぐにわかって、離れないように腕の力を強めた。
「冗談じゃなくて、です、か……?」
そろりと聞いてくるのはせめてもの譲歩だったんだろう。
俺の気持ちを否定しない上でそうやって自分の気になることも聞いてくるあたり、彼女は人の気持ちに敏い。……そしてすごく、優しいんだと思う。
「これでも。
……自分から告白したのは今がはじめてだよ」
「っ、」
痛みを知ってるから。
傷つく痛みを知っているから、慎重で。
「頑張って俺のこと好きにさせるから。
……よろしくね、俺の彼女さん」
「か、葛西先輩、」
「その呼び方とりあえず変えようか?
紫逢って呼んでよ。……俺も、瑠璃って呼ぶ」
ひどく優しい彼女のことを。
守ることができるのは、どうか俺であればいい。