そのなみだに、ふれさせて。
・永久に美しき紫に蝶は止まりけり
◆
「おはよ、瑠璃ちゃん」
「なるせくん……! おはようっ」
「瑠璃ちゃんがこっち来るなんてめずらしいね。
生徒会の仕事、落ち着いてるの?」
翌朝登校すれば、特進の教室があるB棟の入口でばったりなるせくんと遭遇した。
ふるふると首を横に振って「そうじゃないんだけどね」と言えば、彼は何かを悟ってくれたのか、それ以上詮索してくることはない。
なるせくんとの距離感は、すごく心地いいと思う。
お互いに好きになったりしないから、安心して、いろんなこと話せちゃうし。
「あ、なるせくん。
転校生の女の子のことなんだけど、」
まわりの女の子たちから、刺すような視線を感じるのはいつものこと。
双子の兄は翡翠で、ちーくんとも仲が良くて、美形揃いな生徒会に所属するわたし。……敵視されるのは、言われなくてもわかることだった。
「うん。どうかしたの?」
「え、と……どんな人なのかなぁ、って」
「見た目の話? 綺麗な女の子だったよ。
……会長が、やけに気にかけてるみたいだね」
そりゃあまあ、恋人ですからね。
めんどくさがり屋な会長が、自ら生徒会棟を出て面倒を見るくらい、とくべつな女の子ですからね。
「……やだなぁ」
小さく溶けた声は、なるせくんには聞こえていなかったみたいだ。
……わたしだって、自分のこんなつぶやき、誰にも聞いて欲しくない。
だってわたしの醜い部分が、出てしまってる。
はじめから特別なんかじゃなかったのに。……ただ生徒会役員だから、構ってくれている、だけなのに。溺れそうになる自分まで、キライになる。