そのなみだに、ふれさせて。

・永久に美しき紫に蝶は止まりけり








「おはよ、瑠璃ちゃん」



「なるせくん……! おはようっ」



「瑠璃ちゃんがこっち来るなんてめずらしいね。

生徒会の仕事、落ち着いてるの?」



翌朝登校すれば、特進の教室があるB棟の入口でばったりなるせくんと遭遇した。

ふるふると首を横に振って「そうじゃないんだけどね」と言えば、彼は何かを悟ってくれたのか、それ以上詮索してくることはない。



なるせくんとの距離感は、すごく心地いいと思う。

お互いに好きになったりしないから、安心して、いろんなこと話せちゃうし。



「あ、なるせくん。

転校生の女の子のことなんだけど、」



まわりの女の子たちから、刺すような視線を感じるのはいつものこと。

双子の兄は翡翠で、ちーくんとも仲が良くて、美形揃いな生徒会に所属するわたし。……敵視されるのは、言われなくてもわかることだった。




「うん。どうかしたの?」



「え、と……どんな人なのかなぁ、って」



「見た目の話? 綺麗な女の子だったよ。

……会長が、やけに気にかけてるみたいだね」



そりゃあまあ、恋人ですからね。

めんどくさがり屋な会長が、自ら生徒会棟を出て面倒を見るくらい、とくべつな女の子ですからね。



「……やだなぁ」



小さく溶けた声は、なるせくんには聞こえていなかったみたいだ。

……わたしだって、自分のこんなつぶやき、誰にも聞いて欲しくない。



だってわたしの醜い部分が、出てしまってる。

はじめから特別なんかじゃなかったのに。……ただ生徒会役員だから、構ってくれている、だけなのに。溺れそうになる自分まで、キライになる。



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