そのなみだに、ふれさせて。
「雨音が、"同じクラスに生徒会役員がいる"って言ってたの。あなたのことよね?
よかったぁ。仲良くなりたいと思ってたのに、昨日は教室にいなかったんだもん」
「……おい、ほづみ」
さり気なく呼ばれる会長の名前と。
悪意も嫌味も感じない"仲良く"という言葉。
「はじめまして、御陵 ほづみです。
昨日転校してきたばかりで分かんないことたくさんあるから……仲良くしてくれたら、嬉しいな」
ひょいっと席を立った彼女がすぐ目の前まで歩み寄ってきたことで、その身長がわたしよりもさらに低いことに気づく。
150センチあるかないか、と小柄な彼女は微笑むだけでやっぱり可愛くて、お人形さんみたいだった。
「……? あの……?」
なかなかわたしが返事しなかったせいか、彼女の薄墨を詰め込んだような綺麗な瞳が揺らぐ。
さらりと流れる彼女の黒髪にはっと我に返って、声を出そうとした、そのタイミングで。
「瑠璃」
呼ばれた、わたしの名前。
"誰"なのかをみんなが理解した瞬間、まわりの女の子たちが一斉にざわめいた。……無理もない。
「なんでここに葛西先輩が……!?」
「ってか見て、やばくない……!?
瀬戸内先輩と葛西先輩がそろってるのとか、めちゃくちゃレアなんですけど……!」
普段ここにいないはずの紫逢先輩が、訪れた。
しかも会長も一緒、となれば、女の子たちはあっという間に騒ぐ。……写真撮ってる子までいるけど、紫逢先輩も会長も、まったく気にしていなかった。
「っていうかさっき、
麻生さんのこと"瑠璃"って呼んでなかった?」
ぴくり、肩が揺れる。
……こういうときって、どうして女の子たちは勘が良いんだろう。"役員だから仲良しなのかな"ぐらいに思って、見逃してくれればいいのに。