Miseria ~幸せな悲劇~

「……美花」


「えっ!」


誰かに呼びかけられ、美花の目の前の景色がまたがらりと変わった。


そこは海外の映画で見た貴族のダイニングのような場所であった。先程までとはまるで正反対。豪華できらびやかな美しい場所だ。


目の前にはたくさんの料理がテーブルの上に並べられている。美花はテーブルの端にある席に座っていた。


「……もう、今度はなんだよ」


寝起きのように美花の意識はぼんやりとしている。そして、非現実的な出来事の連続に美花の頭は混乱していた。


そんな美花のテーブルの反対側には黒いドレスを着た黒髪の少女が座っている。同性の美花が思わず釘づけになるほどの美少女だ。


「…………」


少女は手慣れた様子でナイフとフォークを使い、目の前の料理を無言で食べていた。


中学生か、高校生くらいだろうか。艶やかな黒髪と、他人が心配してしまうほど細い身体だ。


美花にはその少女に見覚えがあった。少女は先程見たセーラ服の少女にそっくりだったのである。


ただ一つ、あの少女と違うところがあるとすれば、それは彼女の瞳の色が、見とれるほど美しい青色をしている点である。
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