Miseria ~幸せな悲劇~
「ねぇ、食べないの?」
静かな声で少女が美花に尋ねた。
「はっ?」
美花の前のテーブルにはたくさんの食事が用意されていた。非常に豪華で、洋食のシェフが用意したフルコースのようだ。
「うわ、なんだよこれ…!」
さらにいつの間にか制服を着ていた美花は赤色のドレスに着替えさせられていた。まるで異国のお姫様のようだ。
髪型もそれに相応しく飾られ、爪の先まで別人のような輝きだ。
メイいわく、サッカーと喧嘩にしか興味のない美花であったが、美しいドレスには目を輝かせた。もちろん、こんな服、美花は着たことがなかった。
「ふふっ、面白い顔。気に入ってくれたかしら?」
少女は小馬鹿にしたようにドレスに見とれる美花に言った。
「なっ! そ、そんなこと…!」
美花は照れ隠しで声をあらげたが、少女はそんな美花を尻目に料理を食べ続けた。