Miseria ~幸せな悲劇~
「風花!!!」
美花は風花に駆け寄った。
「おい、しっかりしろよ! 風花!!」
美花は風花を懸命に揺すったが、一切の反応がない。
「う、嘘だろ……おい!」
先程、美花の名前を呼んだ風花が、死んだように白目をむいていた。
「てめぇ、どういうことだ! 喰イ喰イ!!」
美花は喰イ喰イを睨んだ。
喰イ喰イは不幸を食べて、風花を救ってくれるんじゃないのかと。
しかし、喰イ喰イはそんな美花の怒号を気にもとめない様子でテーブルの上を見つめている。
「失礼……」
執事はそんな喰イ喰イの前でドームカバーを開いた。
「なっ…!」
本来は涎を垂らすような美しいフランス料理がドームカバーの下から現れそうなものだが、そこにあったものは、ドロドロの黒い液体が滴る人間の脳みそであった。
「ジュル……」
執事はなんら躊躇することなくその脳みそを喰イ喰イに差し出した。
喰イ喰イは舌を出してその『料理』を美味しそうな目で見つめた。
「何を……」
美花はその異様な光景に唾を飲んだ。まさか、喰イ喰イは、この脳みそを?