Miseria ~幸せな悲劇~
やがて美花の意識は空中に吸い込まれるようにどんどん遠ざかっていった。回りの景色がぼんやりと歪み、また、真っ暗な世界を通過する。
「うわっ!!!!」
気がつくと美花は汗だくで自宅のベッドの上で横になっていた。
「…………はぁ、はぁ、なんだよ、また夢か?」
寝起きの美花の頭の中はぼんやりとしていた。朝日がカーテンの奥から美花の赤髪を照らす。
ここは異世界のような屋敷でも、夢の中の豪華なダイニングルームでもない。現実にある美花の部屋の中だ。
「……でもたしか私」
少しずつ夢の記憶が薄れていったが、あの青い瞳を持った少女の顔だけは忘れられなかった。
「そうだ。喰イ喰イに……会ったんだ」
美花の額から汗が滴り落ちた。
今でも夢であったことが信じられないほど、それはリアルな感覚を伴っていた。