Miseria ~幸せな悲劇~
美花は階段を駆け降りた。階段の底が抜けそうなくらいドンドンと音がした。
「ねぇ、なんで起こしてくれなかったのさ!」
美花はリビングの扉を開けると母にむかって言った。
いつもなら目覚ましで起きられなくても、時間になれば母が起こしてくれていたのだ。
「……はい、はい、それで…………」
美花の苦情を無視して、母は真剣な表情で誰かと電話していた。
「おい、誰からだよ、それ……?」
美花は母の異様な雰囲気を察知して尋ねた。その表情から、風花の医師と話していることは察しがついた。
「…………」
電話越しの母との薄気味悪い沈黙が美花を包んだ。風花に何かあったのか? 美花の頭の中に様々な憶測が交錯した。