Miseria ~幸せな悲劇~


「えっ、風花が!!!」


やがて美花の母は鳥影を見るように目を見開いて叫んだ。


「風花?」


その言葉に美花はビクリと反応した。緊張で美花の額から汗がにじむ。


「おい、風花に何かあったのかよ…!」


美花は母に尋ねた。母は何かを伝えようと口をパクパクとさせたが、息が詰まるのか、言葉として聞き取れなかった。そんな母の様子に、美花は風花の死という最悪のシナリオを連想させた。


「……美花…………風花が……!」


母は受話器を押さえながら美花に向かって言った。


「風花が……目を覚ましたって……!!!」


「…………っ!!!」


その言葉に美花は思わず立ちつくした。


「意識が戻ったのよ……!風花の!!」


感極まった母は涙ながらに言った。その涙を見てようやく美花も事態を理解し始めた。


「風花が……助かった……のか?」


美花が確かめるようにそう呟くと、母は嬉しそうに頷いた。


< 112 / 394 >

この作品をシェア

pagetop