Miseria ~幸せな悲劇~
放課後、メイ達三人は急いで美花のいる病院に向かった。
「美花……」
祐希は美花の病室の前で呟くと、病室のドアに手をかけた。
ガシャン!!!
祐希がドアを開けようとすると、病室の中からドアに何かが投げつけられた。祐希は驚いてドアから身を引いた。
「帰れよ……!」
ドアの向こうから美花の声がした。萎縮してしまうほど圧のある怒鳴り声だ。
「……」
メイと詩依は美花の言葉に身を竦めた。怪我の程度については聞いていた。少なくとも、回復に数年はかかるらしい。それどころか、永久に治らないかもしれない。まして、サッカーは……
「私だよ、祐希……」
祐希は小さな声で語りかけた。幼馴染みとして、美花ともっとも親交のあった彼女が二人に先だって言った。
「……」
返事がない。病室の前にいるのが祐希であると分かっても、美花は無言のままだ。
「入ってもいいかな……? 美花……」
「帰れよ…! 誰とも会いたくない……」
美花が答えた。何もかも拒絶するような絶望が、彼女の声に込められていた。
「…………でも、私……」
祐希は臆せず美花に話しかけた。
しかし、美花はどっと怒りが込み上げたように、また、扉にむかって物を投げた。
ガシャンと、ガラスが割れるような音がする。
「いいから帰れ……!! うざったいんだよ……!」
美花が病室の中で声をあらげた。親友にむけたとは思えないほど、恐ろしい叫びだ。